“エメラルドグリーン”という色があるほど緑の宝石として有名なエメラルド。その特別なグリーンに惹かれる方も多いことでしょう。
その一方でキズが多いのに貴石という扱いで、何がクオリティの決め手なのかわかりづらいという側面もあります。
カラーストーンを扱って50年の色石卸に勤めるバイヤーがエメラルドを選ぶときのポイントや理由をお教えします!
目次
◆「緑の火」と言われるエメラルドの発色は、なぜ生まれるのでしょう?
鉱物としてのエメラルドは、7.5~8の硬度を持つアクアマリンやモルガナイトと同じ、ベリルという鉱物に属します。
純粋なベリルは無色ですが、結晶が形成される過程でほんのわずかなクロムやバナジウム、ベリリウムやアルミニウムが加わることによって、すばらしい発色「緑色の火」となります。
この素晴らしい緑色のベリルがエメラルド。薄い緑の発色を持つものはグリーンベリルと呼ばれ、エメラルドとは区別されています。
◆なぜエメラルドは、インクルージョンが多いのでしょう?
他のベリルとは違い、エメラルドにはインクルージョン(内包物)や小さなひびがあることが珍しくありません。「欠点がない人間がいないように、傷のないエメラルドもまた存在しない」ということわざがあるほどです。
エメラルドの色を作るクロムやバナジウム成分とベリリウムやアルミニウム成分は地球化学的な性質が違う元素で、それぞれが異なる火成活動をしています。
本来、性質の異なるそれぞれの火成活動が同一の地域で重なって起こり、はじめてこれらの成分が出会うので、内包物を巻き込みやすいのです。
インクルージョン(内包物)は、宝石によっては欠点とみなされることもありますが、エメラルドに関しては個性の一部と考えられています。天然の宝石であることの証明とされることもあります。
◆エメラルドは産地によってどんな特徴があるのでしょう?
エメラルドの主な産地は南米のコロンビア、アフリカのザンビアなどです。
世界シェア6割を占めるコロンビア
エメラルドの産地の中でも、もっとも重要だとされているのがコロンビアです。コロンビアで産出されるエメラルドの量は非常に多く、質も超一級です。
原石が六方柱形であることから、エメラルドカットに研磨され、非常に美しく仕上がります。
世界第2位の産出国ザンビア
ザンビア産のエメラルドは、均一的な青みがかったグリーンであることが特徴です。原石は丸みを帯びていることからオーバルカットに研磨されることがほとんどです。
コロンビア産よりも内包物は少なく、透明度が高いため、よりクリアなエメラルドが産出されます。
品質はコロンビア産に次いで世界第二位と言われ、 エメラルド産地として非常に高い評価を受けています。
◆エメラルドにはなぜオイル含浸の処理がされるのですか?
多くのエメラルドがオイルまたは天然の樹脂で習慣的に加工されています。エメラルドは鉱物の性質上、インクルージョン(内包物)が多いため結晶をカットした際に表面上にキャビティ*が露出するからです。*宝石の表面に現れたインクルージョンの陥没穴。
そのままにしておくと、表面に露出したキャビティから液体が流失することによって外部から空気が入り込みます。
その結果 石の内部へと続くキャビティを白く目立たせ、エメラルドの色そのものを低下させてしまうのです。
オイル含侵はそれをカバーするための加工です。
加工というよりエメラルドを保護することに近い処理と考えていいでしょう。
オイル含浸したエメラルドはキャビティ中のオイルが再び流失してしまう恐れがあります。
石の取り扱いには十分な注意が必要です。
◆エメラルドの取り扱いで気をつけなくてはならないことは何でしょう?
エメラルドは超音波洗浄器で洗ってはいけません。洗剤に浸すことも避けたほうがよいです。キャビティの中のオイルが流れ出てしまう可能性があるからです。
また、エメラルドをホワイトゴールドでジュエリー作成することは避けましょう。ロジウムコーティングという過程があるホワイトゴールドは、その作業で脱脂という工程があります。この脱脂でキャビティ内のオイルが消失してしまう可能性があります。
いずれにしてもオイルが流れ出てしまった場合、エメラルドは白っぽく極端に色の見栄えが悪くなってしまいます。
◆エメラルドはなぜエメラルドカットが多いのでしょう?
エメラルドカットという呼び方は、コロンビア産のエメラルドがこの形にカットされることから定着しました。
六方柱形のコロンビア・エメラルドの原石は、この形にするのが一番美しく、ロスが最も少なくなります。
コロンビア・エメラルドにとっては、この形が一般的で、ラウンドやオーバルは特殊な形なのです。
◆バイヤーが教えるエメラルドの選び方。3つのポイント。
ここまでの背景をもとにエメラルドを選びます。
一番大事なのはインクルージョンの入り方です!
①入っている距離/インクルージョンの入り方
入っている距離は割れに直結するので重要です。
エメラルドルースの端から伸びているインクルージョンは衝撃に特に弱く、加工の際に割れたりカケてしまうことがあります。
②入っている量/インクルージョンの入り方
量は少ないに越したことはありません。
ただインクルージョンの量よりもエメラルドの透明度がどの程度感じられるか、が大事です。
細かく小さいインクルージョンが多くあるよりも、大きめのインクルージョンが少しあるほうが透明度が高い場合も多く、量が少ない=いいエメラルドではありません。
③入っている位置/インクルージョンの入り方
宝石のルースは真ん中のあたりをテーブル面といいますが、この中心部分にあまりインクルージョンが無いほうが発色・輝きとも良くなります。
宝石のカットは光を垂直に取り込み反射することで輝くよう設計されています。
特に宝石の真ん中の部分は反射において重要なため、そこに遮るものが無いほうがいいのです。
色に関しては産地によって若干違うため、気に入った色を選べばよいと買い付け時に思っています。
ただ、どの産地を選んでもインクルージョンの入り方によって、だいぶ発色が変わって見えるので、買い付けの決め手はやはりインクルージョンの入り方です。
それに付随して発色がどうか、カットのよしあしがどうかを判断しています。
素敵なエメラルドが見つけられますように!
■エメラルドについてもっと知りたい方はこちらもご覧ください。
エメラルドにまつわる素敵な物語
ジュエリーデザイナー 神保
Facebookコメントはこちら