私があの作品を観たのは2年前の初夏。
まだ梅雨の明けていない渋谷でした。
『ファウスト~愛の剣士たち~』
手塚治虫がゲーテのファウストを題材に描いた作品、
「ファウスト」と「百物語」
そして「ネオ・ファウスト」を
元にしたミュージカル。
観劇したのは、公演の初日。
あの頃、舞台やミュージカルを
あまり観に行くことのなかった私は、
会場がどうとか、演技がどうかなんてことは
全くわかりませんでした。
ただ、その数ヶ月前に観た、
大きなシアターで
プロジェクションマッピングを巧みに使った作品
とは全く異なるものなのだということだけは
ハッキリとわかりました。
しかし、この作品の評判は
とても良いものとは言えませんでした。
SEなのか外の雷雨なのかも分からない会場、
話の展開の早さ、唐突さ、
ミュージカルと呼ぶのも躊躇うほどの歌の少なさ。
翌年、この作品は会場をかえ、
再演されることになります。
初演よりも整えられた設備、
整理された話。
確実に精度が高くなった再演。
同じ話の大枠。
入れ替わりはあったものの
ほとんど同じ出演者と登場人物。
それでも私は、初演の時の彼らに
再び会うことは出来ませんでした。
2年経った今なお、
初演を観たいという者が多いこの舞台。
不恰好ではあったけど、
確かに惹きつけるものを持っていた
あの舞台。
初演で人々を惹きつけたのは
登場するキャラクターなのではないかと
私は思うのです。
設備や脚本に頼ることなく、
ステージの上で懸命に生きたキャラクターたち。
彼らが私たちの前に現れるのは、
たったの3時間。
でもその中で、苦しいほどに全力で、
彼らは生きて、愛を知り、そして死んでいく。
その姿に観客は胸を痛め、
涙を流しました。
私もそのうちの1人。
何度も会場に足を運び、
その度に胸を締め付けられました。
舞台であるから、公演期間中、
毎日毎日繰り返す。
生まれ、そして死んでいく。
全部嘘、でも全部本当。
個人的には人が死んでしまう物語は
好きではありませんが、
こんなに登場人物が
いなくなっていってしまう物語が、
どうしようもなく愛しかったのは、
彼らが死以上に、強く強く生きていたから。
この作品は、「愛」というテーマを持っていました。
それは、決して、色恋だけではなく、
誰かのことを思う気持ち。
作品の中で、ミカエルという天使は言いました。
人間は、天使や悪魔の持っていないものを持っている、と。
それは愛、人と人とが互いに慈しむ心、だと。
この作品の中には、
様々な類の「愛」がありました。
物語の中でミカエルは、唯一、
愛”とは”ということを
言葉で伝える存在であったと私は感じます。
人に寄り添い、
大切な言葉を残していく。
それがミカエルの持つ愛の形
だったのではないかと、
2年近く経った今、改めて思い返して思います。
自分の信じる役割や正義のために、
誰よりも真っ直ぐに、
自分の意思を持って行動するその姿は、
いつもどこか嬉々としているように見えました。
「愛」の他にもうひとつ、
「人生を生きるとは」を問う作品
として上演されたあの作品の中で、
ミカエルというキャラクターは、
主役ではないながらも、
テーマの核心に触れる、
大変印象に残る存在でした。
いつまでも、あの切なくも愛しい
ミカエルの姿を忘れぬように。
そして、作品の中でミカエルがマルガレーテに、
運命の人の名はファウストだと囁いたように、
そっと寄り添い、
何か良いことに気づくことを
手助けしてくれれば
なんていう想いと共に。
水色のドレスと白いブーツを身に纏い、
クルクルの金髪の姿をした天使のイメージで
私は1本のリングを作りました。
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ジュエリー工房ベーネベーネ 二宮
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