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2024.06.19

虹、月、太陽に例えられる魅力の宝石【長石】グループの奥深き世界

# 宝石の基礎知識

宝石の中で、<月><太陽>と、星の名前を冠するとても神秘的、ロマンティックな空気を宿す宝石。
ムーンストーン、サンストーンは、<長石>という同じグループに属します。
この長石グループは<フェルドスパー>という、大きく分けて3つの主成分からなるアルミウムケイ酸塩鉱物を大きな鉱物群を指します。

K(カリウム)を含む「カリウム長石」
Na(ナトリウム)を含む「ナトリウム長石」
Ca(カルシウム)を含む「カルシウム長石」
この3つの種類の主成分の配分と組み合わせによりさまざまな宝石が生まれます。

生成温度による結晶構造の違いで造られる変種も存在し、また成分の配合率によっても8種類の鉱物に分かれ、亜種も多く存在するとても多様な種類と魅力深い鉱物です。
種類によって硬度や劈開にも違いもあり、成分や光学効果などから宝石としての流通名がたくさんある複雑な石でもあります。

内側から放たれる月明りのよう青白い光<シラー>を持つムーンストーン

古代エジプトの時代から愛されている長石の中でも6月の誕生石として知名度と歴史ある宝石の1つ<ムーンストーン>。
長石の中で<シラー効果>と呼ばれる青白い月の光を思わせる光学現象が見られるものを総じてムーンストーンと呼びます。
中でもその内部で光が分散することで青色の光が際立つブルームーンストーン、幻想的に虹色が揺らめくレインボームーンストーンは、様々な国や地域で月にまつわる神秘的な逸話を多く生み出してきました。

インドのヒンディー教の神話では月の神の額に埋まっている宝石で、「月の光が固まって出来ている」と信じられており、口に含むと未来が見えると信じられていました。
古代ローマでは月の女神ダイアナが見える石とされ、「月の満ち欠けに合わせて大きさが変わる」と信じられるなど美しい物語と月の神や力が宿る石と人々に思わせたのも頷ける独特他の宝石には無い魅力を持っています。

アンティークジュエリーにも多く用いられ、ルネ・ラリックやルイス・コンフォート・ティファニーなどの名だたるデザイナーたちの想像力を掻き立て、愛された宝石として今も素晴らしいジュエリーが多く残っているのも、この宝石が持つ魅惑的な美しさに抗えないものがあるからではないでしょうか。

きらきらと光の粒が湧き上がる<アベンチュレッセンス>を持つサンストーン

月に例えられたムーンストーンに対しサンストーンは太陽に例えられてきた宝石です。
こちらも1種類の長石の種類を指すのではなく、銅や赤鉄鉱など微細な金属鉱物が内部で光を反射することで輝きを生み出すものをサンストーンと呼びます。
この赤やオレンジ、ゴールド色の内包物によって輝く様子は「アベンチュレッセンス」や「サンストーン効果」と呼び、内包物のかたちや大きさ、数や密度によってラメが舞うように煌めくものや、太陽に照らされて輝く砂浜のように細かくキラキラと瞬くように輝くもの、内包物がぎゅっと集まることにより鏡のようにギラりと光が走るものなどピース一つ一つに個性があるのが魅力お宝石です。
南インドで最初に発見されました。

その他の宝石でも稀に同じように金属鉱物で同じ現象が起きるものを「●●●サンストーン」と呼ぶことがありますが、こちらは長石グループ以外にも商品名として使用されており光学現象が同じく内包物によって光ることから同じく名づけられています。
中世の北欧ヴァイキングたちが曇りの日にも太陽の位置が判る羅針盤代わりとして使用したとの逸話から「アイオライトサンストーン」などが有名な為、混同されることが多いのですが長石とは別の鉱物にも使われることがあるため注意が必要です。

市場に流通する<長石>の仲間。難しい鉱物の話はさておいて、こんなに魅力的。

オーソクレース
透明度が高く、宝石質で丁寧なカットを施されたものが非常に少ない宝石です。バニラのような淡黄色や、グレー、無色のものなどがありますが完全な無色のものは希少で細かなカットが施されたルースは純水を凍らせたような涼しげで瑞々しい輝きを放ちます。

オリゴクレース
透明~アイスグリーン色のナトリウム長石の代表的な宝石、透明度が高く宝石品質の単体としての産出も少ない。
障子に透けて見える緑園のような優しい色合いは人気が高い宝石です。

アンデシン
ナトリウムとカルシウムが半々の中性タイプと呼ばれる長石、通常は白から黄色のものが多い宝石ですが宝石として扱われるものは朱赤~深紅、もしくは濃いグリーンのものです。
ただ、大深紅のものが採掘された高品質のチベット産のものは手作業で採掘される為、数も少なく「チベットナイト」などと呼ばれ、希少価値が高くなっています。
深紅のアンデシンはチベットでは古くから高僧たちから聖なる石として祭祀などに用いられておりエキゾチックで神秘的な魅力が感じられます。
アンデシンには稀に種類によってカラーチェンジするものもあります。
一般的に拡散処理を施されたものが殆どですが、濃い椿の葉のような深いグリーンが白熱光の下では真っ赤に色が変わる姿は椿の花が咲いたような艶やかさがあります。

ラブラドライト
ナトリウムとカルシウムを含む長石の種類でカルシウムを多く含む長石で、宝石としてのラブラドライトの呼び名で販売されているものはグレーや濃茶、透明な地色の中にオーロラのように様々な色の光が見える美しい「ラブラドレッセンス」と呼ばれる光学効果を表すものです。
層状に育つ長石の層の間に光が分散することで独特の輝きを見せてくれますが産出量はけして少なくないにも関わらず、成長過程で特有のインクルージョンが生じやすい特徴を持つ為、透明度が高く虹のような美しい閃光が見える大粒のものは非常に少ない宝石です。

レインボームーンストーン(ラブラドライトやアンデシンラブラドライト)
乳白色~透明な地色に様々な色彩のシラーが浮かび、虹を閉じ込めたような多彩な景色が瑞々しい透明感の中に光が浮かぶように見えることから今一番人気の高い長石の宝石です。
角度や光の強さや種類、当たり方によっても強く見える色彩が異なる為、カットによっても見え方がガラッと変わることも魅力の一つです。
マダガスカルから高い宝石質のものが産出されていますが大粒のものはかなり数が減ってきているそうです。
鉱物としてはアンデシンとラブラドライトの成分のどちらにも分類出来る非常に成分の割合が微妙なことから両方の名前が鑑別で出る為、鉱物名がアンデシンラブラドライト、もしくはラブラドライトとなります。

オレゴンサンストーン
ラブラドライトの中でもアメリカオレゴン州で採れる鮮やかな発色と独特のオレゴンサンストーンは非常に人気が高く、濃いグリーンや赤は人気が高く、中でも深紅のように深い赤色を持つものはネイティブアメリカンの方々の間では「大戦士の血が染み込んで真っ赤に染まった」と信じられており滴るような鮮赤と森の緑を映した秘境の泉のような深いグリーンは産出量が少なく、価値が高いとされています。
ただ、夕陽のように朱赤とオレンジが混ざり合うような色味や、ゴールデンの中にオレンジが滲む、朝日のような明るい色味のものも非常に魅力的です。
オレゴンサンストーンはサンストーン効果が出ないタイプのものもオレゴン州で採れる赤や緑のラブラドライトはオレゴンサンストーンと呼ばれます。
(ベーネ銀座サロン 松本)